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税理士が知っておくべき資産税重要事例

こんにちは。税理士の金子です。

税理士においては年間36時間の研修受講義務が課されております。研修は、会場にて行われるものとWEB上にて行われるものとがあります。今回、WEB上にて行われておりました研修を受講した際、一般的に知っておいたほうがよいと思われるものがいくつかあったので、そちらを紹介していこうと思います。


1.相続発生後に保証債務の特例が適用できるかどうかの可否

事例

・Aは長男B(個人事業主)の事業に係る借入金の連帯保証をしていた。

・Bは事業に失敗し多額の借金を背負うことになった。

・Aは所有する土地を売却してBの保証債務を履行しようと考えたが、土地の売買契約締結前にBが死亡してしまった。(Bの相続に係る相続人はA一人)

この場合、Bの死亡後にAが土地の売却をした場合、保証債務の特例は適用できるか?


回答

相続が発生した時点で、Aに帰属する債務となってしまうため、同特例は適用できない。

(このような取り扱いを避けたいのであれば、AはBの相続の放棄をする必要がある)


2.相続により財産を取得しないことによる詐害行為について

事例

・甲の妻である乙に相続が発生(相続人は甲と長男である丙の2人)

・乙の相続財産は、不動産と現預金5000万円(その他生命保険金2000万円が甲に振り込まれた)

・甲は、弟Pが経営するQ社の銀行借入に対して極度額1億円の連帯保証を行っている

・Q社は債務超過であり、経営改善の見通しが立たないことからQ社の保証債務の履行を求められる可能性がある。(このため甲は、自身は相続財産を一切取得せずに、すべてを丙に取得させたいと考えている)

この場合、生命保険金の非課税の適用を受けるため、(相続放棄せずに)相続財産を一切取得しないことに問題はないか?


回答

Q社が倒産して甲が保証債務を求められた場合には、遺産分割協議により甲が相続できたはずの財産を敢えて取得しない行為が「詐害行為」に該当し、債権者から訴えられる可能性がある。

そのリスクを考慮するのであれば、(たとえ生命保険金の非課税が使えないとしても)相続放棄をすることを検討する必要がある。


3.未分割財産を換価した場合の譲渡所得税等の取り扱い

①換価時に換価代金の取得割合が確定している場合

各相続人が換価代金の割合に応じて譲渡財産を取得したことになり、その割合により譲渡所得税が課される。

②換価時に代金の取得割合が決まっておらず、後日分割される場合

原則

法定相続分により譲渡所得税が課される

例外

所得税の確定申告期限までに換価代金が分割され、共同相続人全員がその取得割合により譲渡所得税の申告をした場合には、その申告が認められる。

※法定相続分による申告又は更正の後に換価代金が分割されたとしても、法定相続分による譲渡に異動は生じないため、更正の請求をすることはできない。

(換価分割の場合、遺産分割協議書への記載が不十分であると、贈与税が課される可能性があります。十分に注意が必要です。)


4.代償分割の注意点

代償金として支払った金額が相続財産の価額を超える場合には、その超える部分の価額は贈与税の課税対象となる。

この場合の価額は、相続税の課税価格ではなく時価による。



特に資産税は取り扱い一つで税額が大きく変わってくる可能性があります。

詳細を弁護士・税理士等の専門家に十分に説明の上進めていくようにしましょう。

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