前回の記事では貸借対照表を作成するうえでの主な留意点について解説しました。(参照:ミスのない決算書を作るための要チェック項目(貸借対照表))
今回は損益計算書を作成するうえでの主な留意点について解説していきます。
売上・売上原価
・発生主義により計上されているか
・売上と原価の対応関係は適切にとられているか。
・前期以前の原価率と著しく差異がある場合、その理由を説明できるか
貸借対照表の時にも記載しておりますが、発生主義での計上、棚卸資産の適正額の計上は必ず確認する必要があります。
そうすれば、売上と原価の対応関係はとれているはずですが、期末近くの売上や原価については、ミスがないように確認するようにしましょう。
役員報酬(法人の場合)
・定期同額給与、事前確定届出給与に該当するか
・使用人兼務役員となれない役員に使用人部分の給与の支給をしていないか
中小企業の場合、役員に対する給与は、原則として定期同額給与か事前確定届出給与しか損金の額に算入できません。それらに該当しないと、所得税や市県民税はかかってくるにも関わらず、法人税の計算上は損金の額に算入されないということになってしまうため、注意が必要です。
使用人兼務役員に該当すると、使用人部分の給与については定期同額給与等の縛りは受けませんが、一定の株式保有割合がある役員、監査役、合同会社の業務執行役員等一定の役員については、使用人兼務役員となれない者がおります。
福利厚生費
・給与課税されるものはないか
・社宅や食事代の支給等は、従業員から定められた金額を徴収しているか
従業員のESを目的とした支出が福利厚生費に該当するには、全従業員を対象としたもので、社会通念上不相当に高額でないこと等一定の要件を満たす必要があります。
また、慶弔費以外の金銭による支出は、全従業員が対象となっていたとしても、給与課税される可能性が高いです。
旅費交通費
・日当を出している場合、旅費規程の作成はできているか
・交際費に含まれるタクシー代はないか
日当の支給は、損金の額に算入されるにもかかわらず、所得税は非課税ですので、節税によく使われます。ただし、旅費規定が作成されていなかったり、日当の額が一般的な額を比べて著しく高いと判断されたら、否認されてしまうので注意が必要です。
タクシー代は、他社が主催する懇親会等への参加のために役員や従業員が支出するものは旅費交通費ですが、自社が主催する懇親会等に参加してもらうために得意先を会場まで案内するものである場合には交際費に該当します。
交際費
・役員の個人的な支出が含まれていないか
・商品券等を渡した場合、相手先一覧を作成しているか
役員の家族でいった食事代や旅行代等、事業に関係のないものが含まれていると、「役員報酬」として損金の額に算入されず、源泉所得税は徴収されるというダブル課税が生じてしまいます。
また、商品券等換金性の高いものについては、税務調査の際、相手先に反面調査が行われる場合もあるので、留意する必要があります。
保険料
・長期契約の損害保険等である場合、来期以降に対応する部分も経費に含まれていないか
火災保険や地震保険の場合、長期契約するほど1年あたりの保険料は少なくなるので、長期契約するケースが多いです。
そのような場合、支出額をそのまま経費計上するのでなく、期間対応で経費計上する額を計算する必要があります。
貸倒損失
・法上の要件をしっかりと確認したか
・同族会社に対するものである場合、寄附金には該当しないか
回収できていない債権について、何でもかんでも貸倒損失に計上することはできず、一定のルールがあります。(参考:貸倒損失として処理できる場合)
そのルールに沿ったうえで、処理を検討していく必要があります。
また、相手先が同族会社や役員である場合、貸倒損失ではなく、寄附金や役員給与と認定される可能性がありますので注意が必要です。
雑収入
・法人税や所得税等の還付金や還付加算金は適正に計上されているか
・現金回収の自販機売上は廃材の売却収入等も漏れなく計上できているか
税務調査の際、自動販売機や廃材を他の業者に売っている収入に漏れがないかは非常によく見られます。
計上していない場合、たとえ少額であっても重加算税を課される可能性が高いので、必ず漏れなく計上するようにしましょう。
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